故郷の知人から真珠が届きました。
昔、私の両親が真珠養殖をしていた頃に、同じ集落で同じように真珠養殖していた方の娘さんからです。
お父さんが亡くなって、残された真珠を加工してほしいとのご依頼です。
送られてきたのは、「生珠(なまだま)」と呼ばれる、貝から取り出したまま、一切の加工をしていない真珠の数々。
形も色もさまざまな、その真珠たちを見ていると、自分の子供の頃を思い出さずにはいられませんでした。
あの頃の故郷には、真珠養殖をしている家が何軒もあり、たくさんの人が住んでいて、とても活気がありました。昭和40年代の話です。
亡くなった、彼女のお父さんにはよくかわいがってもらいました。
今も、祭りの踊りや太鼓打ちを教えてもらったこと、日焼けしたたくましい身体と笑顔を覚えています。
うちの両親も亡くなり、もう集落には真珠養殖をしている家は一軒もありません。
今回お預かりして、ピアスやペンダントに加工した真珠は、家族の歴史を紡ぐジュエリーとして、娘さんから、お孫さんとそのお子さんたちに贈られるそうです。
時の流れに寂しさも感じますが、遠く離れていても、真珠がつないでくれるご縁がこうして続いていくことを、あらためて心強く感じます。

川辺 誠
